LondonsAlice’s blog

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英国ロイヤル・バレエ『シンデレラ』2023

英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2023 シンデレラ フライヤー(チラシ)


行ってきました英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2023
普通の映画みたいにパンフレットとかなくてこんな紙一枚きりだったけど、情報はこれ一枚に収まっているのだった。

 

どこで知ったかはもう忘れたけれど、元々シネマシーズンのことはぼんやり頭にありまして。
でもまあ大体めぼしいバレエや舞台作品の映像はまあまあ手元に集まってるからなぁ、と、あまり食指は動かずにいて。
しかしひょんなことから今季の演目を調べたところ『シンデレラ』があることに気付き。

 

英国ロイヤルバレエのシンデレラ?

 

と驚き。
調べたらあったんですよね。何故か英国ロイヤルにシンデレラのイメージがなかったけど、あるんですよね。昔のやつがDVDも出てた(5月に買った)。
どうやら2023年度の新作(新版)らしい。
最新だからまだブルーレイとかになってない。
私が見たときにはまだイメージ画像一枚きりだったけどそれが素敵だった。
眠れる森の美女とかくるみ割り人形とかみるに衣装やセットはきっと好みであろう!
と予想をつけたのが多分3月くらい。初めての映画館にドキドキしながらWebでチケット買って観に行ってみたら予想に違わず素晴らしかった。
観ている間、私が座っているのはコヴェントガーデンのロイヤルオペラハウスの椅子だった。
赤いビロード(かどうかは知らないけど多分そうなはず!)の椅子。
小さなキノコみたいな照明に囲まれて、あの紋章付きの緞帳の前で。

 

というわけで感想です。


◆本編。

●シンデレラ
それはもう美しかったですとも!
気品がありつつお茶目で可愛い。切なげな仕草も愛おしい。
灰色の仕事着姿に散らばるカラフルな継ぎ当てに性格を感じる。
義姉たちのダンスレッスンのとき端で一緒に踊ったりしてるんだけどそれが勿論のこといちばん上手。
お家でお父様に寄り添う姿やひとりで箒と踊る姿、舞踏会で王子様と踊る姿などなど魅力的なシーンは多々あるけれど、何より目に焼き付いたのは馬車に乗ってお城に向かうときの表情。
最高に幸せな笑顔だった。

 

あとやっぱり衣装!舞踏会ドレス!
襟付マント素敵……馬車に靡いたりふわっと膨らむの素敵……と思ったら早々に外してしまわれて。
そりゃマントあったら踊りにくいのは分かるけどせめてあの襟は残しといて欲しかったとちょっと思ったりする。いやあの襟もパドドゥ踊りにくいだろうけど。
ドレスそのものはシンプルな白チュチュかと思いきや、良く見ると小さなお花が散りばめられていたりスカート後ろに大きな水色リボンがあったりして可愛い。
ついでに言えばマント着用時にそのマント留めるためなのか背中にもリボンがついていた……あれも可愛かった……。
ラストの衣装は舞踏会ドレスの色違いというか後ろのリボンが金色っぽかった気がする。
綺麗だった……。


●王子様
貴公子!
存在感!
顔立ちはどちらかというと柔らかで穏やかな印象だけど、立ってるだけで場が決まるの流石です。
シンデレラにひと目で惚れて夢中な様子が微笑ましい。
舞踏会の男性たち基本的に黒めの衣装の中で白と金の衣装が映えて素敵。

 

シンデレラ役のマリアネラ・ヌニェスさんと王子役のワディム・ムンタギロフさん、うちにある『眠れる森の美女』2018年版でもオーロラと王子やってる人で、ああ安定感あるのは長年の付き合い……インタビューでも言ってたな息が合うというか見ればわかる的なこと。
マリアネラさんが稽古場で観るワディムさんのソロについて言った言葉
「これを無料で毎日観れるの!」
そういう心持ちで練習が出来るの素晴らしいね……。


●フェアリーゴッドマザー
最初に黒っぽい衣装で花売りに扮して出て来るんだけど、そのときは別の役者さんで(これもまた凄みがあって妖しげで私好みの姿である)、本格的に魔法をかけに出て来るときは金子扶生さんという日本人の方で。
この世のものではない雰囲気が凄かった。
衣装がグラデーションで膝あたりから透けてるのと肌にキラキラした大きめのラメ(?)がついてるのもあってか、ああ妖精が……いる……。
背中には羽があって、大きな冠もつけて、妖精の女王様のような仙女様。美。
杖捌きも気品高くていらっしゃる。

 

●四季の妖精
色とりどり!背には羽!
テイスト似つつも個性的な衣装が堪らない。
冬の精の羽が雪の結晶っぽかったのが目を惹いた。この方ひとりだけで見ると雪の女王のようなのに、フェアリーゴッドマザーを中心に並ぶと4人のうちのひとりに馴染むんだなぁ。
この4人、シンデレラが舞踏会に現れたときもチュチュ姿で一緒に出て来るんだけど、あれは人間に姿を変えて……ということなのかしら。王子の友人たちとペアになって踊っていらした。
ロングスカートもチュチュもどっちも素敵。


●お義姉様方
男性ふたりでやるバージョン。
女性ペアバージョンもあるらしい。そっちもすごく観たいけどきっと機会はないであろう……。
意地悪というよりコメディ担当。ふたりの一挙一動に起きる笑い(画面の向こうの劇場から)。
ドレスの派手さ嫌いじゃないよ!
お洒落してるときに使う小道具の鏡や香水瓶がおもちゃみたいで可愛かった。
オレンジ持って踊って捌けるときの動きがなんかデフォルメしたアニメの馬みたいだったな……私の印象ですが……。
それと舞踏会でそれぞれ男性に目をつけて踊るとこも面白かった。若い人と年配の人とがいて、若い人を姉妹で取り合って年配を押し付け合うみたいな。やりとりが濃かった。
若い人の方があんまり表情変えずになすがままって感じなのが印象に残った。

しかし英国ロイヤルシンデレラ、家族構成がシンデレラと実夫と義姉たちで、継母がいないのよね何故か。
自分側の親がいないのにあの振る舞いの義姉たちの神経がすごい。ある意味逞しい。(あとさり気に結婚相手に2度死なれたらしきお父様も可哀想ではある)


●その他
舞踏会のお客様たち、女性がみんなそれぞれ違うデザインのドレスでリアルな舞踏会参加者っぽくて良かった。(男性衣装は同じデザインっぽかったけど)
四季の精みたいに、ベースの形は同じだけど色や飾りが違ってて、ああいうの好き。
特に水色ドレスにピンクのリボンのが好きだった。
途中でちょっとマスカレードっぽくなってたのは不思議だったけど黒マスクな男性陣かっこよかった。
シンデレラたちの家に来たファッション関係の人とかダンスの先生たちも見てて楽しい。
ダンスの先生がなかなかのハンサムで映ってるとき大体彼を見てしまった……義姉たちに苦労してて可哀想可愛かった。
帽子とか用意してる女の人たちの格好も可愛かったな!
後そうだお城の道化師さんが日本人ダンサーさんでこちらも大変に芸達者で面白かった。足にバネ入ってるくらい飛んでた。


●演出いろいろ
妖精の魔法の映像効果?マッピング?が素晴らしくてなぁ……。
四季の精たちのシーンもだけど、シンデレラと王子様が再会して抱き合ったその周りに広がる星座図?みたいな、宇宙がまわっているような様子……。
そこで一旦暗転して、そこから妖精たちの杖がひとつまたひとつと灯っていって星明かりのようになってそれがまた綺麗で。
ラストの幻想的に振り切った結婚式も良かった……天高く続く階段をゆっくり上っていくふたり。
あとセットのことでいくと、舞踏会場が屋外だったんだけど、背景のお城がいかにもイギリスのお城!って感じで気持ちが上がった。真ん中には勿論時計があって12時のシーンに効いてくる。

それとそうだ思い出した。1幕ラストで大きなかぼちゃが浮かんで二つに割れたらそこからキラキラが振ってきて馬車に乗ったシンデレラが現れるという楽しくも美しいシーンがあったのだった!

そういう見せ場もあった。ファンタジー素晴らしい。

 

◆インタビュー。

本編感想のとこにもちょっと書いたけど、合間合間のインタビューがまた興味深く面白く。
出演者のことや振付けのこと、音楽やセットや衣装のこと、満遍なく分かりやすく語ってくれて見応えがあった。
中でも特に私の中に刻まれたことを抜き出すと

 

バレリーナは若けりゃいいってもんじゃない。

 

シンデレラ役マリアネラさんのインタビューで
「2010年にもシンデレラを演じて、その時は衣装やティアラに負けそうで“バレリーナにならなきゃ!”って思ってたけど、今はそう思わなくていい。“私はバレリーナです”って言えるから」
ていうようなことを言ってて(うろ覚えだけど)、王子役との息の合い方の話も含めて、ああバレリーナの美しさとは若さに依るものではなく積み重ねた年月技術と自信の末に輝いているもの……!と感銘を受けた。
あと3公演で引退のベテランプリンシパルコーチもシンデレラ役をやる回がある(あった)んですって。歳重ねても可憐な主演をやれる。
ていうかあのコーチ、ラウラ・モレーラさんというのだけど、3幕版のアリスでハートの女王やってた人じゃないか!キャリア27年のプリンシパルコーチ!

 

ちなみにインタビュアーの女性も昔シンデレラ役やったバレリーナだそうな。
セットの一部を背景に、ちらほら出演者が行き来する舞台裏でのインタビュー楽しかった。
あと振付指導?的な人と衣装担当の人がどっちも違ったベクトルでフェアリーゴッドマザーのようだった。ふっくらした白髪のおばあさまとびしっとしたモード系の人と。

ひとまずこれくらいだろうか感想は。またなんか思い出したら付け足すかも。


英国ロイヤルバレエは割といろいろブルーレイとか出してるから、きっとこのシンデレラもいずれ出ると思う。
それでもその時のキャストが今回と同じかは分からないし、劇場に出向いて演目を観るという心地を久し振りに体感出来て、幸せでした。

 

ていうか映像出すならインタビュー(字幕付き)も込みであの上映映像丸ごとブルーレイに……!!無理だろうか!!